Project-02
自然災害の激甚化・頻発化が懸念される昨今、日本各地で防災システムの整備・強化が急がれている。 そうしたなか、愛知県豊川市の防災情報伝達システムはさまざまな課題を抱えていた。 老朽化に加え、町の合併によるシステムの混在…。 こうした状況を改善し、市民の安全を守るべくシステムの刷新を目指した豊川市は、 そのパートナーとしてNTTデータカスタマサービス東海支社を選んだ。 地域に密着したサービス力と、全国規模のノウハウ・技術力を活かした活躍に迫る。
T.F
2007年入社
東海支社
S.N
T.I
2012年入社
Question 01
取り組んでいるプロジェクトにおける役割について教えてください。
2019年から検討を始め、2021年にシステムが完成した本プロジェクトのマネージャーを務めました。 防災情報伝達システムとは、有事の際に自治体が住民に向けて情報発信を行うためのシステム。 これは東日本大震災を教訓に、国から全国の自治体に対して整備が求められてきました。 しかし、豊川市のシステムは老朽化が進んでいたことに加え、複数の町が合併する以前のシステムを引き継いでいために、市内の地域ごとにそれぞれ異なるシステムで運用しており、そこにはさまざまな課題がありました。 公共事業なので入札となりましたが、競合に打ち勝って私たちが選ばれた決め手は、地域密着のスタイルと全国規模のノウハウ・技術力を兼ね備えている点にあったと聞いています。
以前の豊川市の防災情報伝達システムは、アナログ無線方式という旧式の方法で防災放送を行っていました。 以前のシステムでは国が定める規格に対応できていない部分が残っていたり、将来的にも音声による情報発信だけでは限界もあるため、サービスレベルを向上させコストを抑えられる携帯電話の通信網を利用したIP通信方式へと切り替えることに。 これにより安定した音声放送だけでなく、防災アプリ、SNS、自治体HPなど、さまざまな媒体で満遍なく迅速な情報発信を目指しました。 私の役割は、その根幹を担うセンターサーバーを中心としたシステムの構築責任者です。 情報はセンターサーバーを経由して市内121ヶ所の屋外拡声子局へと届けられるほか、各種媒体へと伝達される仕組み。 親会社であるNTTデータが開発した「減災コミュニケーションシステム®」を採用したため、ベンダーにあたるNTTデータと連携して構築を進めました。
市内121ヶ所に設けられた屋外拡声子局には、音声放送を行うための放送装置やスピーカーなどが設置されています。 私はこうした機器類の導入工事の設計・監督を担いました。 豊川市に現場事務所を開設し、常駐して事務所を運営。施工を行う協力会社と連携して工事を進めていきました。 以前のシステムでは音声情報の到達範囲が不十分で、情報が届かない世帯もあったそう。 また、複数のシステムが混在していたために、例えばAという情報を住民に伝えようとすると、各システムごとにAの情報を発信する作業が必要でした。 今回のシステム刷新により、それらの問題を払拭。 情報発信にかかる時間や労力の削減に加えて、運用コストの圧縮にも寄与しました。 IP通信方式の防災情報伝達システムは全国的にもまだ新しく、ほかの自治体に先駆けた先進的な取り組みです。
Question 02
苦労した場面と、その乗り越え方について教えてください。
これまで私が経験した仕事のなかでも、人命に関わる事業であり、今回はもっとも大きな予算を預かる大規模プロジェクトでした。 そこでシステム構築と施工の両面を管理するとともに、その品質とコストをマネジメントしていく役割に対してはプレッシャーも感じました。 んな私たちにとって大きな助けとなったのは、九州支社で同じような開発実績があったことです。 沖縄県の自治体に対して同様のシステムを導入していたので、その時の情報を共有してもらい、現地を視察して得られた情報がとても参考になりました。 そうした部分にも、全国に拠点を展開する当社だからこその強みを実感しています。
本システムは毎日利用するものではないため、万が一に何か不具合があってもすぐには気づきにくいことが懸念点です。 しかし、人命にも関わる重要なシステムであり、必要な時には必ず使えなければならないので、確実に動作するシステム構築(故障があっても直ぐにスタンバイ機に切り替わる)が求められます。 そのため、いつも以上に些細な変化も見逃すことなく、慎重に丁寧に設計・開発を進めました。 また、防災システムならではの難しさとして、たとえ試験だとしても入念な準備が必要という点があります。 もしも試験時の設定が誤って住民に情報が届いてしまえば、多くの市民の混乱を招く恐れがあったからです。
屋外拡声子局に設置したスピーカーは、その角度や向きによって音声の聞こえ方や聞こえる範囲に差異が生まれます。 その微妙な調整に苦労しましたね。同じ子局でも、ある住民には聞こえにくく、逆にほかの住民には音が大きすぎる、といった状況も発生してしまい、なかなか一筋縄では成功しませんでした。 そこで豊川市の職員の方と住民の間で話し合っていただき、可能な範囲で要望を形にし、粘り強く対応を重ねることで、最終的には豊川市民の方々に情報を伝達できるシステムを無事、完成させることができました。 そのように市の職員の方とは二人三脚で連携する場面が多く、信頼関係の構築が特に重要でした。
Question 03
どのような部分にやりがいを感じましたか?
今回のプロジェクトでは、「人の命」を支える仕事だという責任と誇りを強く実感できました。 川市内を車で移動していた際に、ふと隣を走る車の運転席を見て「もしも自分たちの仕事に不足があれば、この方の命に関わるかもしれない」と感じたことも。 こうした何気ない出来事も自分を鼓舞するきっかけとなり、気を引き締めて業務に邁進した結果、無事に新たな防災システムを提供できたことをうれしく思います。 また、お客様からも「過去のシステムと比べてとても運用しやすいです」とのお声をいただくことができました。
人命に直結するシステムの構築において、言うまでもなく妥協は許されません。 その強い意志を最後まで貫き通し、通信試験に成功した時には心から安堵しました。 こうして私たちがつくり上げたシステムは、お客様にしっかり使いこなしていただかなければ意味がないので、導入サポートにも注力しました。 システムを初めて触るお客様の立場に立って、ITリテラシーのレベルに関わらず誰にでも理解しやすい手順書を作成。 自分たちの力を最大限に発揮して地域に貢献できたことをうれしく感じています。
私は市内の各地で工事を監督していたので、住民の方と接する機会も多くありました。 戸別受信機の使い方を説明することもあり、住民の方から直接「ありがとう」「防災システムがより良くなって安心」といった声を聞くことができて、モチベーションアップにつながりました。 また、私たちが工事を行った121ヶ所の屋外拡声子局から情報を正常に発信できるかをテストする際には、部署を問わず支社の多くのメンバーが各子局へ出向いてくれました。 支社ならではの一体感と温かみを感じられてうれしかったです。
Question 04
このプロジェクトを通してどのように成長しましたか?
東海支社にとって初の防災システムの提供であり、なおかつ大規模な案件。 かなりチャレンジングなプロジェクトだと感じていたとおり、初めてのことをたくさん経験しました。 もちろん大変だと感じたシーンは1つや2つではありませんが、挑戦はやはり楽しいもの。 高いモチベーションを保って役割を全うしてくれたS.NさんやT.Iさんたちメンバーにも、部署に関係なく協力してくれた支社の社員たちにも、プロジェクトマネージャーとして感謝の思いでいっぱいです。 今後も支社の強みを最大限に活かしたプロジェクトマネジメントを通じて地域に貢献していきたいと思います。
今回のプロジェクトを通じて、システムの細部にまで意識を巡らせる重要性を改めて認識しました。 小さなエラーや通常とは少し違う動作など、ほんのちょっとした異変があれば、徹底的に原因を追求する。それがエラーを起こさない高品質なシステム構築につながります。 今回は大規模な案件だけに関係者も多く、全員でゴールを目指すためのコミュニケーションスキルやマネジメント能力が成長したと感じます。 現在、このシステムは保守のフェーズに入っていますが、引き続き妥協のない姿勢で仕事に臨む日々です。
支社単独で手がける案件としては非常に大規模なもので、私にとっても手探りで進めた部分が多かったです。 例えば、今回の工事は建築基準法や電波法などの法律も関係するため、自ら調べて学習したり、ほかの支社に協力を依頼するなどして、壁を乗り越えていきました。 大変ではありましたが、その分だけ新しいスキルが身についたと思っています。 現在はお客様の要望に合わせてシステムの最適化や機能の拡張を進めているところ。 これからもお客様とともに歩み、地域に安心を届けていきたいです。
記載された写真および原稿は取材当時のものです。