Project-03
地球規模で持続可能な社会への変化を目指す今、グリーンエネルギーの活用は全世界共通のテーマだ。 そのニーズに応え、NTTデータカスタマサービスでも再生可能エネルギーを活用した発電施設の構築事業に乗り出している。 そのうちの1つで、2023年3月に完成した施設は、農地を兼ねた新しいタイプの太陽光発電施設として国内有数の規模を誇る。 幾多の壁を乗り越え、顧客・自社・社会にとっての「3方良し」を実現したプロジェクトの全容を紹介しよう。
K.H
2003年入社
ファシリティエンジニアリング事業部
K.N
2008年入社
H.U
2017年入社
Question 01
取り組んでいるプロジェクトにおける役割について教えてください。
カーボンニュートラルの実現を目指す企業に対して、私たちは太陽光などの再生可能エネルギーを活用した課題解決策を提供しています。 この「グリーン事業」は当社の新しい事業の柱の1つとして、2013年からスタートしました。 それ以来、さまざまなお客様に対して発電施設などの構築を支援してきましたが、今回ご紹介するプロジェクトは発電事業と農業という2つの事業を1つの土地で行うという特徴があります。 お客様はとあるエネルギー事業者様。 すでに複数の太陽光発電施設を運営していた状況を踏まえて、より大きな価値を生み出すために私たちが提案したのが、営農型というまだ新しいタイプの太陽光発電施設でした。 私はプロジェクトマネージャーを務め、全体の計画立案やお客様・行政との調整を担いました。
このプロジェクトは用地も含めた提案から始まりました。 元は荒れ果てた耕作放棄地だった場所を太陽光発電施設に生まれ変わらせることで、お客様の事業のみならず地域の課題解決にも寄与するという社会貢献性の高い案件です。 私は実務の責任者として、行政への申請業務をはじめ、太陽光システムの設計から土木工事・電気工事の施工管理、協力業者の調整までを一手に担いました。 工事期間の約1年間は現場の仮設事務所に常駐。 太陽光システムの設計では、発電の安全性を確保するための条件に沿って機器やシステム構成を決定していきました。 現場は電気を生み出すだけでなく農地として作物を育てる場所でもあるので、太陽光発電装置が日光を遮らない場所を確保するために、営農業者と協力して遮光率を計算するといった特殊なプロセスも経験しました。
この発電施設の広さはおよそ3万平米。たたみ1畳分の太陽光発電パネルを5,280枚も設置できる広さです。 営農型の発電施設としては国内でも有数の規模であり、瞬間2万ワットの発電を可能とするスペックです。 それだけに社内でも注目を集めたプロジェクトで、追加メンバーの公募に立候補して部署を異動。 私はプロジェクトの終盤から参加しました。こうしてK.Nさんのいる現地に入り、作業主任として主に協力業者への指示や管理を行いました。 屋外での工事となるので、作業はその日の天候などに強く影響されます。 「今日は風が強いので計画を変更して別の作業を先にやろう」といったように、日々の状況に合わせて柔軟に作業内容をやりくりする必要がありました。
Question 02
苦労した場面と、その乗り越え方について教えてください。
今回は行政の認可が必要となる場面が多く、その点に苦労しました。 現地に営農型の太陽光発電施設をつくるためには、まず農地として行政の認定を受けた後に、その転用を認めてもらう必要があります。 こうした行政への申請は初めての経験だったため、どうすれば農地として認められるのかが明確ではなく、手探りで進めていく必要があったのです。 そこでお客様や営農業者と協力して対応策を考え、実際に現地で作物を育ててみることにしました。 その結果、無事に農地として認められ、ホッとしましたね。 プロジェクトの初期フェーズにあたる行政との調整には不明確な部分が多かったため、あらかじめ余裕を持ったスケジュールを組んでおいたおかげで予定していた工期に収めることができました。
この発電施設は、再生可能エネルギーの活用を後押しするために国が施行した「FIT制度」の終了期限までの稼働開始を目指しており、タイトなスケジュールで工事が進められました。 しかしながら、荒地を造成する上では「地面を掘ってみなければ分からない」といった不確定要素が多かったため、無事に期限までに収めることができるか常に肝を冷やしていました。 しかも、造成工事は当社として初の取り組み。 ノウハウがなかったためになかなか思うとおりに進まず、いざ太陽光発電パネルを載せるための架台を建てようというタイミングで造成の問題が判明したこともあります。 さらに、農業にも配慮する必要があったため、営農業者に意見をもらいながら造成を進めました。
私にとって太陽光発電施設の構築は初めての経験だったので、すべての業務にハードルがあったと言っても過言ではありません。 私の知見が足りないために先輩や協力業者に確認して判断しなければならないシーンが多く、知識の大切さを痛感しました。 また、現場は強い風が吹きやすい地域だったため、部材が破損してしまったことも。そこで、風による影響を抑えるための工法を協力業者と話し合って実施しました。 こうした環境のなか、作業員の安全を守ることを第一優先としながらも、予定した工期どおりに作業を進めていくことも苦労したポイントです。 K.HさんやK.Nさんが立ててくれた計画に基づいて、リスクを想定して先手を打つことを心がけていきました。
Question 03
どのような部分にやりがいを感じましたか?
元々の現場は鬱蒼とした森のように荒れ果てた土地でした。 そのため、安全や衛生の観点で課題が多く、近隣に住む方にとっても悩みの種だったのです。 工事が終わった時、きれいな場所になったと住民の方に喜んでいただけたことは、これまでにない経験として印象に残っています。 また、私たちが所属するファシリティエンジニアリング事業部は「ITの裏方」を支える仕事が多いのですが、太陽光発電施設は目に見える成果。 また一味違ったやりがいを感じることができました。
サステナブルでありながらも、2つの事業を両立する。 そして、お客様にとっても、当社にとっても、社会にとってもメリットがあるという、非常に大きな意義のある仕事に関われたことを誇りに思います。 さらに、今回は地図に残る仕事です。子どもたちに自分が手がけた成果を見せられるというのは、やはりうれしいものですね。 現場に常駐していた1年間は家族との時間を取りにくかったのですが、プロジェクトが終了した今は、働くことの喜びを父として子どもたちに伝えたいと考えています。
私はプロジェクトの途中から参加したため、初めは協力業者とのコミュニケーションに苦戦しました。 しかし、自分なりに努力するうちに徐々に信頼を得られたのか、円滑にやり取りができるようになった点にやりがいを感じました。 また、工事を行うなかでは近隣住民の方に声を掛けていただく機会も多く、地域の方が私たちと一緒に工事の進捗を見守ってくれることにも喜びを感じました。 無事に施設を完成させたことで、お客様だけでなく地域の方にも貢献できたことをうれしく思います。
Question 04
このプロジェクトを通してどのように成長しましたか?
ここまで大規模で、なおかつ営農型の太陽光発電施設の構築は初めてだったので、これまでの経験値では補うことが難しい問題に数多く直面しました。 苦労はしたものの、それだけたくさんの知見を吸収できたと感じます。壁にぶつかった時は、上司やメンバーと助け合うことで乗り越えてきました。 こうして出来上がった施設はさまざまな事業者から注目を浴びており、見学会の参加者も増えています。 実際に「営農型」というポイントに魅力を感じた事業者からの引き合いも多く、すでに提案中の案件も。 今後もさまざまなお客様と社会に貢献できるはずです。
私は何事も「まずは自分自身が体験してみる」ということを重視してきました。 今回、初めて造成工事に取り組む上でも、土木工事関係の講習会に参加して免許を取得するなど、「自分で体験」したからこそ成長できた部分があったと感じます。 実際の作業は協力業者に依頼するとしても、指示役の私自身がその作業を経験していなければうまくいかないと思うのです。 今後は現在の主流である太陽光発電だけでなく、蓄電池や風力、水力など、さまざまなグリーンエネルギーを活用したプロジェクトに挑戦していく方針。 そのためにも主体性を備えた後輩の育成に尽力したいと思います。
現在の部署に異動する前にも工事の設計・管理を担当した経験はありますが、太陽光発電施設だからこそ必要なる知識があることを知りました。 さらに経験を積んで自分自身に知見を蓄えることで、カーボンニュートラルの実現に貢献していきたいと思います。 先輩であるK.Nさんから特に大切だと教わったことは「圧倒的当事者意識」。 それを強く意識することで、ステークホルダーから求められる仕事を高いレベルで実現できるはずです。 社会貢献性の大きさをモチベーションに、今後も努力していきます。
記載された写真および原稿は取材当時のものです。